「全部受け止める、全部受け止める、全部受け止める俺らが!」
ウルフルズと迎えた最高の年末年始!【3DAYS最終日レポート】
ジョンB(b)仕切りの1/5中野サンプラザ[東京]
『ライブ2020-2021 〜Happy New Yeah!! 好きでよかった〜』

未曽有のコロナ禍に襲われた’20年。ウルフルズは、“少しでもファンに元気と笑顔を届けたい”という想いから、5月には『タタカエブリバディ(demo ver.)』をYouTubeにて無償公開、『サンシャインじゃない?』の配信リリース、関連したショートムービーをYouTubeにて公開。7~8月には2カ月連続で無観客ライブを配信、10月には大阪で野外フェス『OSAKA GENKi PARK』の初日のトリを務め、そのパワフルなパフォーマンスでオーディエンスを鼓舞するなど、持ち前のバイタリティとユーモアで激動の1年を駆け抜けた。そんな彼らが、約1年半ぶりの有観客での単独公演となった『ウルフルズ ライブ2020-2021』を年末年始に開催。’20年12月30日・31日はフェスティバルホール[大阪]、’21年1月5日は中野サンプラザ[東京]にて行われ、メンバーがそれぞれ1公演ずつライブのタイトルやセットリストを考案するというスペシャルなライブとなった。そこで、同3公演全てのライブレポートを実施。最後は年明けの1月5日・中野サンプラザにて行われた3DAYS最終日、ジョンB(b)が名付けた『ウルフルズ ライブ2020-2021 〜Happy New Yeah!! 好きでよかった〜』、渾身にして濃厚な’21年の幕開けをお届けします!


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こたつにみかんにビールにポテトチップスetc...と寝正月にピッタリの(!?)おめでたい画像を前に準備万端のオーディエンスの高ぶりが、チャットやSNSからもビンビン伝わってくる。そう、ウルフルズの新年一発目のライブにして年末から続いた3DAYS公演の最終日は、有観客での観覧と配信での視聴のどちらでも楽しめるハイブリッド公演で、ハモンドオルガンをバックにゆったりと歌い上げたいきなりの名曲『バンザイ〜好きでよかった〜』から、トータス松本(vo&g)が'21年のウルフルズの始動を告げるエモーショナルな歌声を聴かせていく。

「あけましておめでとうございます! 今日はホンマにね、すごいしみじみ思うわ。この日が無事に迎えられてホントにうれしいです!」(トータス松本)

『それが答えだ!』ではトータス松本が大きく手を振り、目の前の、そして画面の向こうのオーディエンスにアピール。ゲストミュージシャンである桜井秀俊(g・真心ブラザーズ)のギターソロをバックに華麗にステップもキメて、ステージを所狭しと動き回る。その情熱的なステージングを、ウルフルズのライブには欠かせないもう1人のゲストミュージシャンである浦清英(key)、ジョンB(b)とサンコンJr.(ds)の盤石の演奏とコーラスがしっかりと支える。

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「去年、大阪で12月30日・31日と無事に終わって、あとは東京1本。やっとこの日が来ました。とにかく今日もメンバー一同全身全霊、心を込めて務めて参りますので、最近の世の中の鬱屈とした、何とも言えないモヤモヤとした想いは、全部ここに置いていってくれ! 全部受け止める、全部受け止める、全部受け止める俺らが! とにかく精いっぱい楽しんで、"今日は来てよかった"って思って帰ってくれたらそれでいい。それだけで俺らは幸せ。最後まで楽しんでいってくださいよろしく!」(トータス松本)

コロナ禍に聴けば聴くほどに心に沁みる『タタカエブリバディ』の熱いメッセージと、どっしりとしたリズムに心も身体も揺れ、配信でライブを見ているオーディエンスが自宅で声を上げている姿が目に浮かぶようだ。ウルフルズ流のディスコソング『センチメンタルフィーバー 〜あなたが好きだから〜』では、ジョンBの甘い歌声にも酔いしれながら、そのパワフルな演奏に奮い立たされる。ジャジーなミドルナンバー『生きてく』は、配信でも音の粒立ち1つ1つが分かるようなサウンドで楽曲の輪郭を際立たせるなど、ウルフルズのライブは元気をくれるという幸福な事実をかみしめるシーンが続いていく。

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MCでは、「この新年のタイトルは僕が付けたんですけど...」と、今日の主役であるジョンBが話し出すと、「曲順も全部ジョンBが考えたんですよ。これ、俺には絶対に考えつかへん曲順やねん。サンコンの日もそうやったけど、"ここでこうなるんかい!"みたいな、やっててすごいスリリングというか。基本ツアーって、途中でマイナーチェンジはするけど、曲順はずっとそのままで何十本も回るじゃないですか。でも今回は、3本ともバラバラってちょっと変わったことをやったんで。内心ね、俺もビビッとったんよ(笑)」と心情を吐露するトータス松本。

「まぁいろんなことはありますけど、お正月やから許しといてと(笑)。今日は楽しんで帰ってください!」(ジョンB)

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「'20年内で僕と松本くんの監督責任は終わったんで(笑)、またちょっと違う気持ちで会場に来ました。本当に3日間ちゃんとできるのかなと変な汗をかいた時期もありましたけど、関わってくれた皆さんのおかげでとても楽しくやれそうな感じがします。今日は配信もあるんで、お家で観てる人もゆっくり楽しんでください!」(サンコンJr.)

「去年はライブとか仕事らしい仕事ができひんかったわけやんか。だから事務所の倉庫でも片付けようって話になって、そしたら(巨大なセットを指さし)ああいうもんがあるわあるわ(笑)。そんだけあるなら1回ステージに全部乗っけちゃえって...もう守護霊みたいなもんですよ(笑)。やおよろずのウルフルの神たちに守られながらの(笑)。今年はデビュー30周年のプレ・イヤーやから、それも縁起があっていいわって。いい年にしよう今年は!」(トータス松本)

歴代のマスコットキャラクターがそろい踏みのセットを背に、月明かりのような照明を浴びて歌い上げたサム・クックの『ワンダフル・ワールド』の日本語カバー、GSテイストの『きみだけを』をしかり、さまざまなジャンルをウルフルズ色に染められる個性をここでも痛感させられる。

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ライブも中盤に差し掛かり、ジョンB考案のセットリストを分析&解説するトータス松本が、「僕は今、朝ドラ(=NHK連続テレビ小説『おちょやん』)でひどい男の役をやっています(笑)。ホンマでも朝ドラってすごい影響力やわ。俺はただセリフを覚えてやってるだけやのに、"出てくんな(竹井)テルヲ!"みたいに言われんねんな(笑)。でも、楽しいんですよ。テルヲがテルヲを叱るつもりで歌ってみようかな」(トータス松本)

歪んだギターをかき鳴らす『借金大王』では、「ホンマにテルヲのことを歌ってるみたいな歌詞やな...予見してたんかな。時が経って歌詞の聴こえ方が変わることってあるよねってさっき楽屋でみんなで話してたんよね...」(トータス松本)と驚きつつ(笑)、『サムライソウル』では、ほえるようなボーカルでオーディエンスを引っ張っていく。

「この間、曲を書かせていただいたのもあって、伊藤蘭さんのコンサートを見に行ったんですよ。お客さんは往年の全キャン連(=全国キャンディーズ連盟)の人たちやから"蘭ちゃーん!"とか言いたいはずやのに、デッカいビームサーベルみたいなサイリウムを全力で蘭さんに向けて振ってて...それにホントに感動したんよね。伊藤蘭さんはどれだけの人の気持ちを幸せにしてるんやろうと思ったし、俺にそれができてるかな、俺も頑張るぞって。人前で歌う仕事をしててよかったなって再確認したし、音楽は、歌はホンマにすごいなって改めて思った。俺自身もどれだけ音楽に救われてるか! そういうことをメンバーに恵まれて30年近くも一緒にやれてるのを確認できた意味でも、'20年っていい年やったんちゃうかなと思いました。まだまだやれてないこともやりたいこともあるし、もっともっといけるんちゃうかって、みんなで目をギラギラしてやっとんのよね。今日はそういう我々を見に来てくれて...結構レアな場所におるかもしれんよ。多分俺、今までのキャリアで一番ホットな瞬間におる気がする。それは今日、舞台に上がってる人間みんなで。今日が迎えられただけでもどれだけ俺らはうれしかったか! ありがとう!!」(トータス松本)

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溢れ出す想いを矢継ぎ早にオーディエンスに告げた後は、軽妙なコーラスが楽しいアーバンなダンスナンバー『サンシャインじゃない?』、ブルージーなラブバラード『ひとつふたつ』を、音楽の力とステージに立てる喜びを心に刻むように歌い上げれば、客席のサイリウムがその想いを増幅させるように左右に揺れる。鉄壁のバンド陣がバーケイズの『Soul Finger』を演奏している間に、トータス松本はお尻の部分が切り抜かれた奇抜な衣装に着替え、「どうこれ80s風。新年初ケツや! 拝みなはれ!!」と(笑)『バカサバイバー』へ。次々と繰り出される1曲1曲が本当に個性の塊で、ウルフルズのライブでしか感じられない高揚感と充足感がたまらない。桜井秀俊のギターソロからトータス松本のブルースハープも抜かりなしのタイトな演奏で魅せた『続けるズのテーマ』後も、気持ち良さそうに『あついのがすき』を熱唱。メンバーとのコーラスの掛け合いも絶妙で、ライブのクライマックスへ向け徐々にボルテージが上がっていく。そして、コール&心のレスポンスを経由した桜井秀俊のギターが鳴り響けば、待ってましたの『ガッツだぜ!!』で大爆発! 配信で見ているそれぞれの最前列も総立ち間違いなしの熱量で、その流れで『ええねん』と、これで盛り上がらないわけがないという怒涛の攻勢にオーディエンスも大興奮だ。

「何か話したいんやけど、全然頭が回らへん。ジョンBの曲順怖いわ(笑)。ホンマにね、音楽の力というか、多分みんなは楽器をやっててよかったなと思ってるだろうし、俺は歌っててよかったなって思ったんよね。絶対にユーモアは忘れずに、いつでも笑って、どんなアホなことでも真剣にやれる、そんなバンドでいたいなと思います。みんなの"ワー!"っていう声がまた聴ける日が多分来るよ。そんなに先じゃない。そのときが来たら、今まで我慢してた分、思いっ切りやったろうや! 今年はいい年になるように、みんなで楽しくいこうぜ!」(トータス松本)

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今日のセットリストは今、汗だくになってトータス松本が言ったことが音楽になったような曲ばかり。笑顔で泣けてくる名曲『笑えれば』も間違いなくそうで、胸に心地良い重みがズンとくる。'21年もこの歌があれば大丈夫、そんなふうに心強く思う。「どうもありがとう! ウルフルズでした」と深くお辞儀をしてステージを去るメンバー。

「じゃあアンコールも景気よくいこか!」(トータス松本)と、最後は会場もお茶の間も身振り手振り間違いなしの『ウルフルズ A・A・Pのテーマ』へ! 年末年始をまたいだ渾身にして濃厚な3DAYSを締めくくる、まさに完全燃焼のエンディング。'21年の躍進を約束するような充実感に満ちた表情で、ステージを後にしたウルフルズだった。

Text by 奥"ボウイ"昌史
Photo by 渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)
Supported by ぴあ関西版WEB

Set List

3日間を締めくくる感動と充実感
ウルフルズからの音楽のお年玉!

『ウルフルズ ライブ2020-2021
〜Happy New Yeah!! 好きでよかった〜』
1月5日(火) at 中野サンプラザ

01. バンザイ〜好きでよかった〜
02. それが答えだ!
03. タタカエブリバディ
04. センチメンタルフィーバー 〜あなたが好きだから〜
05. 生きてく
06. ワンダフル・ワールド
07. きみだけを
08. 借金大王
09. サムライソウル
10. サンシャインじゃない?
11. ひとつふたつ
12. Soul Finger
13. バカサバイバー
14. 続けるズのテーマ
15. あついのがすき
16. ガッツだぜ!!
17. ええねん
18. 笑えれば
ENCORE
19. ウルフルズ A・A・Pのテーマ

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