「いろんなイヤな想いも全部ここに置いてけ! 俺らに任せとけ!!」
ウルフルズと迎えた最高の年末年始!【3DAYS 2日目レポート】
サンコンJr.(ds)仕切りの12/31フェスティバルホール[大阪]
『ライブ2020-2021 〜あーだこーだOh!みそか!〜』

未曽有のコロナ禍に襲われた’20年。ウルフルズは、“少しでもファンに元気と笑顔を届けたい”という想いから、5月には『タタカエブリバディ(demo ver.)』をYouTubeにて無償公開、『サンシャインじゃない?』の配信リリース、関連したショートムービーをYouTubeにて公開。7~8月には2カ月連続で無観客ライブを配信、10月には大阪で野外フェス『OSAKA GENKi PARK』の初日のトリを務め、そのパワフルなパフォーマンスでオーディエンスを鼓舞するなど、持ち前のバイタリティとユーモアで激動の1年を駆け抜けた。そんな彼らが、約1年半ぶりの有観客での単独公演となった『ウルフルズ ライブ2020-2021』を年末年始に開催。’20年12月30日・31日はフェスティバルホール[大阪]、’21年1月5日は中野サンプラザ[東京]にて行われ、メンバーがそれぞれ1公演ずつライブのタイトルやセットリストを考案するというスペシャルなライブとなった。そこで、同3公演全てのライブレポートを実施。今回は12月31日・フェスティバルホールにて行われた3DAYS 2日日の大みそか、サンコンJr.(ds)が名付けた『ウルフルズ ライブ2020-2021 〜あーだこーだOh!みそか!〜』、ウルフルズと過ごした最高の年の瀬の模様をお届けします!


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いよいよ'20年も最終日となる大みそか、1年の務めを終えたオーディエンスが今年最後のお楽しみのためにフェスティバルホールへと集っていく。昨日の熱いライブを見届けた巨大なステージセットが今日もその出番を待ち構える中、オンタイムに照明が落とされるのと同時に手拍子が湧き立ち、場内は一気に総立ちに。真っ赤な衣装に身を包んだトータス松本(vo&g)が雄叫びを上げたオープニングナンバーは、『あーだこーだそーだ!』。ライブのタイトルにも冠された1曲を、桜井秀俊(g・真心ブラザーズ)、浦清英(key)というおなじみのゲストミュージシャンを迎えた生命力みなぎるバンドサウンドでじっくり聴かせていく。「大阪ー!」と何度も叫ぶトータス松本に拍手で応えるオーディエンス。ウルフルズのライブがもたらすエネルギーがたった1曲で確信できる。『ありがっちゅー』では、トータス松本がフェスティバルホールの高い天井を見つめながら、ハンドマイクで気持ち良さそうに歌い上げる。

「年末の忙しい時期に集まっていただいてありがとうございます! ちゃんと感染対策もやってのこの場なんで、みんなで楽しもう。全身全霊心を込めて演奏して歌うから、みんなは楽しんでくれるだけでいい。1年のいろんなイヤな想いも全部ここに置いてけ! 俺らに任せとけ!! 最後までよろしく!」(トータス松本)

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トータス松本の頼もしい言葉に奮い立たされながらの『ヤング ソウル ダイナマイト』は、真紅の照明に照らされた情熱的なパフォーマンスに胸をつかまれ、ここに集った多くの人が、"やっぱり自分の人生にはウルフルズが必要だ"と感じたのではなかろうか。「みんな、サイリウムをポッキンして」とトータス松本が促したミドルバラード『ひとつふたつ』では、メンバーのコーラス、そして、オーディエンスの心の声が、色とりどりのネオンが揺れる広大なフェスティバルホールにこだまする。『あついのがすき』でも、観客のクラップと共にリズムとコーラスを作っていくジョンBとサンコンJr.。序盤からしっかりと熱のこもった演奏に、会場はとりわけハッピーな空気に包まれる。

MCでは、「今日は年の瀬というのもあって、のんびりやる時間もあっていいんじゃないかということで。その辺は今日の舞台責任者、サンコンから」とトータス松本からバトンを渡されたサンコンJr.が、想いを語っていく。

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「1曲目の『あーだこーだそーだ!』をなかなか演奏する機会がなくて、やるタイミングを見計らってたらコロナになっちゃって。メンバーにもやりたいと言い出せずにいたところ、今回は各々に1日ずつコンセプトを任せますと言われたんで。あの曲の2番の"一年があっちゅう間で"っていう歌詞に年末感があるなと思ったり、最後に"おおお~♪"って歌うところが、俺だけやと思うけど第九(=『交響曲第9番』(ベートーヴェン))にも聴こえるなと(笑)。この話は、ここで言うために松本くんにもひと言も言わなかったんですけど」(サンコンJr.)

「こんなにしゃべるサンコン、初めて見たよ(笑)」(トータス松本)

「あと、アマチュアの頃に"フォーク・ウルフルズ"とか、僕らなりにいろいろと趣向を凝らしてライブをやってたことも思い出したりして」(サンコンJr.)

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そして、ここからはメンバー3人のみで送るアコースティックコーナーへ。椅子に腰かけアコースティックベースを持って斜に構えるジョンBに、「スツールに座ってる感じがイキッてんなと思って(笑)」とツッコんだトータス松本に会場も思わず大爆笑。ジョンBも「違うんですよ! このベースを立って持つとめっちゃカッコ悪いんで」とリハーサルでもいろいろと構え方を試したことを告白するなど、まるで飾らない3人のやりとりが何とも微笑ましい。

「昨日はこんなコーナーなかったからね。今日だけ大みそかっぽく」と、トータス松本がアコースティックギターをかき鳴らし始まったのは、名曲『バンザイ〜好きでよかった〜』。素朴なサウンドで際立つメロディと歌声に身を委ねる贅沢なひとときを彩るように、サビではサイリウムが左右に揺れる。ひときわ長い拍手を浴びた後は、「次はタイムリーな曲ですよね(笑)」(サンコンJr.)、「今、歌うのが気まずいな...というのも借金の歌やから(笑)。『おちょやん』見てる!? 初めに言うとくけどあれ、役でやってるからね?(笑)」と、トータス松本が主人公の父親・竹井テルヲ役で出演中のNHK連続テレビ小説『おちょやん』の話に。「やっぱり台本がめっちゃおもろいのよ。俺らの仕事と一緒なんですよね。台本=曲なの。曲が良くなかったら、いくら演出=アレンジを頑張っても知れてる。あとはもう...歌がうまければ(笑)。役者と役者のセリフのやりとりはセッションによう似てるよ。なかなか朝ドラのヒロインのお父さん役なんてする機会はないと思うから飛び込んでみたけど、おかげでいろんなことも勉強になったわ。何かマジメな話になって歌いにくいけど(笑)」と、長尺のMCを経て披露した『借金大王』、そして、サム・クックの『ワンダフル・ワールド』の日本語カバーと、長年歌い続け今やウルフルズの血となり肉となった楽曲が、アコースティックの優しい肌触りでじんわり胸に沁みてくる。

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「もう大みそかやで。ホンマ...今日はやれてよかったね」とつぶやくトータス松本に、盛大な拍手で応えるオーディエンス。続いて、東日本大震災、そして阪神淡路大震災を引き合いに出して振り返り、当時『大阪ストラット』のリリースが延期になったエピソードも飛び出す。そして、「音楽ってどういう役割があるんやろうって今回もまた考えて、改めて音楽の仕事をしててよかったなと思ったし、音楽にはすごい力があると思いました。音楽を聴いたり見たりすることで、気持ちが"よっしゃー!"ってなる。俺らがやれることは音楽しかないというか、俺らには音楽がある。みんなにはウルフルズがあると思ってください。頑張るんで」(トータス松本)と、アコースティックコーナーの最後を飾ったのは『ええねん』。ライブ鉄板を惜しみなく投入してもまだまだ名曲が控えるウルフルズの楽曲群の層の厚さには、つくづく感心させられるばかりだ。

「いろんなことを考えた1年やったけど、必要以上に怖がったり悲観的にならずに暮らしていけたらなと僕は思ってて。それぞれがそういう気持ちで向き合えば大丈夫やと思うんですよ。常に最善の方法を取りながら、それでいてユーモアを欠かさずに楽しいことをやるのがエンターテインメントだと思うし、ここにきてウルフルズがやってきたことは間違いじゃなかったって自分の中でハッキリしました。真面目に精いっぱい面白がって、フザけて、楽しんで、音楽をやってきてよかったなってすごい思う。これからもこの調子でやっていくぞー!」(トータス松本)

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大きな拍手に後押しされた『サンシャインじゃない?』を皮切りに、真摯なメッセージで語りかける『きみだけを』、日々を生きる全ての人に捧ぐ人生讃歌『ひと ヒト 人』と、ウルフルズの基本姿勢を指し示すような充実のセットリストが続く。そして、コロナ禍の今、いろんな価値観が精査されていく中で改めて響いた『笑えれば』をはじめ、ウルフルズの楽曲の魅力を再確認させられた'20年。気付けば口ずさんでいるのはウルフルズの歌だった。何年経っても、何回聴いても、想いを新たにさせてくれるウルフルズの音楽の深みとすごみ。軽々しく使いたくはない唯一無二という修飾語が、ウルフルズにはやはり当てはまる。拍手喝采のフェスティバルホールを眺めるトータス松本が、「ああ...楽しいわ。初心に返る、ホントに。みんなも楽しんでくれてたら最高にうれしいです。みんなのマスク越しの目だけ見てても、何かグッとくるものがあるね」と感慨深げに語る。そして、「『おちょやん』の撮影4日目ぐらいで緊急事態宣言が出て。自分の部屋で"何か曲を作りたいわ~"と思って作った曲を、今からやりたいと思います」と、『タタカエブリバディ』では「おい どんな感じ?」と友人のように語りかけ、ステージを端から端まで歩き回り熱唱する。スウィングする『生きてく』もパワーもらえる大人の1曲で、成熟するウルフルズを見せつける。

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「ライブで1年をシメられるなんて最高やん! ウルフルズらしい、代表曲みたいな曲をブチかますんで、心の声で歌ってくれ~!」(トータス松本)

『ウルフルズ A・A・Pのテーマ』で幕を開けた終盤戦は、「曲が若いなぁ...この歳になるまで歌うとは思わへんかった(笑)」と、さっきの大人のウルフルズとは一転、変わらぬ蒼さで盛り上げ、その熱量を上げていく。桜井秀俊のギターとトータス松本のブルースハープが火を噴くドファンクナンバー『続けるズのテーマ』からコール&心のレスポンスを経て、ラストの『ガッツだぜ!!』では今日イチのテンションでド派手な照明と共にエンディングを迎える。

その熱気を引きずったアンコールでも、これぞウルフルズの除夜の鐘となる(笑)『大阪ストラット』を打ち鳴らす! 広いホールの隅々にまで上がる手がこれ以上ないラストシーンを生み出し、「よいお年を! また来年会おう!!」(トータス松本)と近いうちの再会を地元大阪で約束したウルフルズが、怒涛の'20年を見事に締めくくった。

Text by 奥"ボウイ"昌史
Photo by 渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)
Supported by ぴあ関西版WEB

Set List

1年の最後にとびきりの元気をもらった
音楽の力を再確認した幸福な一夜!

『ウルフルズ ライブ2020-2021〜あーだこーだOh!みそか!〜』
12月31日(木) at フェスティバルホール

01. あーだこーだそーだ!
02. ありがっちゅー
03. ヤング ソウル ダイナマイト
04. ひとつふたつ
05. あついのがすき
06. バンザイ〜好きでよかった〜
07. 借金大王
08. ワンダフル・ワールド
09. ええねん
10. サンシャインじゃない?
11. きみだけを
12. ひと ヒト 人
13. 笑えれば
14. タタカエブリバディ
15. 生きてく
16. ウルフルズ A・A・Pのテーマ
17. 続けるズのテーマ
18. ガッツだぜ!!
ENCORE
19. 大阪ストラット

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